OpenAI APIの最新状況|GPT-5.6の3層と、2026年7月の値下げ

GPT-5.6の3層構成、7月30日の値下げ、Fast modeへの置き換え、Responses APIの新機能。2026年7月末時点のOpenAI APIの料金と使い分けを整理しました。

自社のシステムに生成AIを組み込むとき、いちばん最初に決めるのがモデルと料金です。ここが変わると設計も見積もりも動きます。2026年7月のOpenAI APIは、その両方が短期間で動きました。7月末時点の状況を整理します。

1. モデルは3層になりました

2026年7月9日、GPT-5.6がAPIでも使えるようになりました。ひとつのモデルではなく、Sol・Terra・Lunaという3つの層で提供されます。数字が世代、名前が層です。

モデルID 位置づけ コンテキスト
gpt-5.6-sol 最上位。難易度の高い専門作業向け 約105万トークン
gpt-5.6-terra 知能とコストの均衡点 約105万トークン
gpt-5.6-luna コスト重視。大量処理向け 約105万トークン

3層とも扱える分量は同じで、テキストと画像を受け取ってテキストを返します。学習データの区切りは2026年2月16日です。

音声まわりはリアルタイム系のモデル群(翻訳専用を含む)、文字起こし系、画像生成のGPT Image 2が別に用意されています。ChatGPTの音声モードを支えるGPT-Liveも、APIでの提供が予告されています。

2. 7月30日に、下の2層が値下げされました

ここが実務でいちばん効く変更かもしれません。2026年7月30日、Lunaが80%、Terraが20%の値下げになりました。値下げは、CodexやChatGPT Workで有料プランの枠を消費する量にも反映されています。

モデル 入力(100万トークン) キャッシュ読み出し 出力(100万トークン)
GPT-5.6 Sol 5.00ドル 0.50ドル 30.00ドル
GPT-5.6 Terra 2.00ドル 0.20ドル 12.00ドル
GPT-5.6 Luna 0.20ドル 0.02ドル 1.20ドル

まとめて非同期に処理するバッチ利用なら、いずれもさらに半額です。

「100万トークンあたり何ドル」では実感が湧かないので、実際の仕事に直します。A4資料10枚ぶん(約1万字)を読ませて2,000字の要約を作ると、1回あたりこうなります(1ドル150円換算)。

  • Sol:約17円
  • Terra:約7円
  • Luna:約0.7円

Lunaの単価はSolの25分の1です。月に1万件流すなら、17万円と7,000円の差になります。同じ処理を、どの層に流すかで桁が変わるという状況です。

ちなみに2023年のGPT-4で同じ仕事をすると約63円でした。3年で90分の1です。Claudeを含めた値段の推移はClaudeとOpenAI、どちらを選ぶかにまとめています。

料金表を見るときのコツは、入力と出力を分けて考えることです。要約や分類は入力が重く出力が軽い。文章生成やコード生成は出力が効きます。自社の処理がどちらに寄るかで、実質の単価は変わります。

3. 層を混ぜる、が前提の設計になりました

3層あるということは、ひとつを選ぶ話ではなくなったということです。OpenAI自身が挙げている例が分かりやすいので引きます。コーディングの流れなら、不確かなところの判断と計画づくりはSol、仕様が固まった実装とテストの実行はLuna。工程ごとに層を変えます。

実装する側の作法としては、次の順番が扱いやすいと思います。

  • まず全部を上位モデルで作り、品質の基準を先に固める
  • その基準を評価の仕組み(テストや採点)に落とす
  • 工程を分解し、下の層に落としても基準を割らないところから置き換える

最初から安いモデルで組むと、品質の基準が曖昧なまま進みがちです。基準を先、最適化を後のほうが結果的に早い場面が多いはずです。

4. 速さを買う仕組みが変わりました

従来のPriority Processingは、Fast modeに置き換わりました。Solの場合、標準の最大2.5倍の速さを、2倍の料金でという設計です。知能そのものは変わりません。以前の指定はそのままFast modeとして扱われるので、既存のコードを慌てて直す必要はありません。

レスポンス速度が体験に直結する用途(対話型のUI、リアルタイムの支援)では検討の余地がありますが、バッチ処理や夜間の集計に速さを買う理由はあまりありません。ここも工程ごとの判断になります。

5. キャッシュの扱いが変わりました

同じ前置き(システムプロンプトや長い資料)を毎回送る構成では、キャッシュが効くかどうかで請求額が変わります。GPT-5.6では次の点が変更されました。

  • キャッシュの区切りを明示的に指定できるようになりました
  • 最低30分はキャッシュが保たれます
  • キャッシュへの書き込みは、通常の入力単価の1.25倍で課金されます
  • キャッシュからの読み出しは、これまでどおり90%割引のままです

書き込みに料金がつくようになったぶん、一度書いて何度も読む構成かどうかが分かれ目になります。読み出しが1回きりなら、キャッシュしないほうが安く済むこともあります。

6. Responses APIに、エージェント寄りの機能が入りました

GPT-5.6と同時に、Responses APIに2つの機能が加わりました。どちらもエージェントを組む側にとっては大きい変更です。

プログラム的なツール呼び出し

従来は、ツールを呼ぶたびに結果をモデルに戻し、モデルが次を判断する往復が発生していました。この機能では、モデルが軽量なプログラムを書いて実行し、その中でツールをつなげます。中間データはプログラム側で絞り込まれ、必要なものだけがモデルに戻ります。

往復が減るぶん、トークンも時間も減ります。中間データがモデルの文脈に流れ込まないので、データを残さない構成(ゼロデータ保持)とも両立します。

マルチエージェント(ベータ)

1回のリクエストの中で、複数のサブエージェントを並行して走らせ、その結果をまとめて返す仕組みです。ChatGPT側の「ultra」設定(既定で4体を並行させる)と同じ発想を、自前のアプリケーションでも組めるようになりました。

ただし並行させた数だけトークンは増えます。難しい問題を短時間で片づけたい場面に絞るのが現実的です。


まとめ:単価表より先に、工程を分ける

3層になり、値下げがあり、速さも別売りになりました。選択肢が増えたぶん、「どのモデルが最強か」という問いはあまり役に立たなくなっています。自社の処理を工程に分けて、それぞれに必要な品質を決める。そこから逆算するほうが、結果として安くて速い構成にたどり着きます。

Anthropic側の料金や設計思想との違いは、ClaudeとOpenAI、どちらを選ぶかで並べて比較しました。ChatGPT側の製品としての動きはChatGPTの最新アップデートにまとめています。

組み込む前に一度、その処理は何人分の仕事なのかを出しておくと、単価の議論が具体的になります。手順は業務の棚卸しのやり方にまとめました。

数えるのが面倒ならAI活用診断でも目安は出ます。APIを組み込む形と、業務システムとして作る形の違いは、ツール・事例の一覧の画面を見ると早いと思います。

この記事を書いた人
MONOSASHI 編集部
「測る」メディアの編集部。システム開発・AI・DXの実務知識を、現役エンジニアと元発注担当の視点で、判断に効く形に編集しています。
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