採択の通知が届いた。ここからお金が入ってくる、と思った矢先に気づくことがあります。補助金は、先にお金をもらって使うものではありません。多くの制度は、自分で全額を払い、実績を報告して、そのあとに入金されます。この順番を知らずに動くと、通ったのに進められない、という事態が起こります。
お金が動く順番
制度によって細かな違いはありますが、おおまかな流れは共通しています。
| できごと | 手元のお金 | |
|---|---|---|
| 1 | 申請 | 動かない |
| 2 | 採択の通知 | 動かない |
| 3 | 交付決定の通知 | 動かない(ここから発注できる) |
| 4 | 発注・導入・支払い | 全額が出ていく |
| 5 | 実績報告・検査 | 出たまま |
| 6 | 額の確定・請求 | 出たまま |
| 7 | 入金 | ここで戻ってくる |
ポイントは二つあります。ひとつは、採択と交付決定は別物だということ。採択の連絡が来ても、交付決定の通知が届く前に発注すると、その費用は対象外になる制度がほとんどです。もうひとつは、4から7までの間、手元からお金が出たままになるということ。ここが数か月に及ぶこともあります。
実際にいくら、どれだけの期間、立て替えるのか
業務ソフト・クラウドの導入を想定して、上限50万円・補助率2/3の制度で、75万円のシステムを導入する場合で考えてみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 導入費用(税抜) | 750,000円 |
| いったん支払う額 | 750,000円(+消費税) |
| あとから戻る補助金 | 500,000円 |
| 最終的な自己負担 | 250,000円 |
最終的な負担は25万円でも、一時的には75万円を用意する必要がある。しかも消費税は補助の対象外とする制度が多いため、税込では82万5,000円が先に出ていきます。金額が大きい制度ほど、この立て替えの重さは効いてきます。上限1,000万円の制度なら、1,500万円前後を先に払う話になります。機械や設備を入れ替える省力化・自動化の補助金を見るときは、上限額より先に、立て替えられる額から確かめておくとよさそうです。
① 消費税は補助対象外の制度が多い(実質的な負担は表の計算より増える) ② 補助金は課税対象になり得るため、受け取った期の税金も見ておく。顧問税理士がいれば、申請の段階で一度相談を。
立て替え期間をしのぐ手立て
手元資金だけでは厳しいときに、取れる手はいくつかあります。
- つなぎ融資:採択通知や交付決定通知を示して、金融機関から入金までの資金を借りる。補助金を前提とした融資に対応している金融機関があります
- 概算払い・前金払い:一部の制度では、完了前に一部を受け取れる仕組みが用意されています。公募要領に記載があるか確認する価値があります
- 支払条件の調整:発注先と分割払いや検収後払いを相談する。ただし、支払いが完了していないと実績報告に出せない制度が多いので、報告期限との兼ね合いを先に確認します
- 制度の規模を落とす:上限の大きい制度を狙うより、立て替えられる範囲の制度を選ぶ。これも立派な判断です
金融機関に相談するなら、申請の前がおすすめです。採択されてから駆け込むより、「この制度に申請するつもりで、通ったらこの時期に立て替えが要る」と先に話しておくほうが、話が早く進みます。
実績報告でつまずくと、入金がさらに遅れる
入金の時期は、実績報告がすんなり通るかどうかで変わります。差し戻しの原因になりやすいのは、書類まわりです。
- 支払いの証拠がそろっていない:現金払いや、振込名義が事業者名と違うと確認に時間がかかります。事業用口座からの振込が無難です
- 見積書・発注書・納品書・請求書・領収書の流れが合わない:日付や金額の食い違いは必ず指摘されます
- 導入したことの証拠がない:設置写真、稼働画面、研修の記録など。導入時に撮っておくだけで、あとが楽になります
- 対象外の費用が混ざっている:一式見積もりだと切り分けができません。内訳を分けた見積書をもらっておきます
どれも、導入の最中に少し気をつけるだけで防げるものです。書類は、あとから作れません。
申請前に一度計算しておく
補助金の検討で最初に見るのは、たいてい上限額です。ただ実務で効いてくるのは、いくら立て替えられるかです。ここが足りていないと、せっかくの採択が動かせません。
申請を出す前に、紙一枚でいいので「先に払う額」「戻る額」「戻るのはいつごろか」を書き出してみてください。それだけで、狙う制度の選び方が変わることがあります。
なお、支払いや報告の細かなルールは制度ごとに異なります。補助金一覧から各制度の公式サイトを開いて、公募要領でご確認ください。
立て替える額そのものを小さくしたいなら、入れるものの規模を見直す手もあります。ツール・事例の一覧で、どこまでを仕組みで受け止めるかの当たりをつけてから見積もると、金額の話が具体的になります。