「上限◯万円」に釣られない|補助率と自己負担で読む補助金

上限額は「これ以上は出ません」という線でしかありません。60万円の投資なら、上限450万円の制度より上限50万円の制度のほうが多く受け取れることもあります。

補助金を並べて見比べるとき、最初に目に入るのは上限額です。「上限450万円」と「上限50万円」が並んでいれば、前者に気持ちが向くのは自然なことだと思います。

ただ、実際に手元から出ていく金額を決めるのは、上限額ではなく補助率です。ここを取り違えると、大きな制度を追いかけて、結局どちらも動かせないということになりがちです。

上限額は「これ以上は出ません」という線でしかない

補助金の計算は、いつも2段構えです。

  1. 対象になる経費に、補助率をかける
  2. その額が上限を超えていたら、上限で頭打ちにする

つまり上限450万円というのは、450万円もらえるという意味ではありません。補助率1/2なら、900万円の投資をして初めて上限に届きます。200万円の投資しかしないなら、上限がいくらであっても受け取れるのは100万円です。

投資額 補助率1/2・上限450万 補助率2/3・上限50万
60万円 30万円 40万円
150万円 75万円 50万円(上限)
900万円 450万円(上限) 50万円(上限)

60万円の投資なら、上限50万円の制度のほうが多く受け取れます。自分がいくら使うのかを先に決めてから比べないと、この逆転は見えません。

掲載212制度の補助率を数えてみた

MONOSASHIが掲載している制度の補助率を集計すると、こうなりました。

補助率 制度数 100万円使ったときの自己負担
1/2 118 50万円
2/3 51 約33万円
3/4 10 25万円
1/3 6 約67万円
1/4 4 75万円
4/5 3 20万円

※ 「1/2〜2/3」のように枠によって幅がある制度は、下限の数値で数えています。定額支給など補助率の形をとらない制度は除いた集計です。

いちばん多いのは1/2、次いで2/3です。同じ100万円の投資でも、制度によって手元に残る負担は20万円から75万円まで開きます。上限額の差より、この差のほうが効いてくる場面は多いと思います。

表の計算に乗ってこない負担

もうひとつ、見落とされがちな要素があります。

  • 消費税は補助の対象外とする制度が多く、税抜で計算されます。100万円(税抜)の投資なら、実際に払うのは110万円で、戻るのは50万円。手元の負担は60万円です
  • 対象外の費用が混ざる:ハードウェア、保守費、既存システムの改修など、見積書の一部が対象から外れることがあります。コンサル費や専門家への謝金の扱いも、制度によって分かれます
  • いったん全額を立て替える:補助金は後払いで、入金までの数か月は自社の資金でまわすことになります
見積書ができたら、この4行を書く

① 対象になる経費はいくらか ② 補助率をかけるといくらか ③ 上限で頭打ちにならないか ④ 税込で、先に払う額はいくらか。この4行が出れば、制度の比較はほぼ終わります。

枠が複数ある制度は、どの枠かで条件が変わる

大きめの制度には、たいてい複数の「枠」があります。通常枠、特別枠、賃上げを条件にした枠、といった具合です。厄介なのは、枠ごとに補助率も上限額も違うこと。一覧表に載っている「1/2〜2/3」といった表記は、枠による幅を示しています。

自社がどの枠に入るのかを確かめないまま、いちばん有利な数字で計算してしまうと、あとで見込みが崩れます。公募要領で枠の条件を確認して、自分が該当する枠の数字で計算し直す。ここは手を抜かないほうが安全です。

賃上げを条件に上限が上がる枠は、とくに慎重に。達成できなかった場合に返還を求められる制度もあります。人件費の見通しと合わせて判断したいところです。

では、何を並べて比べるか

制度を選ぶときに並べるのは、上限額ではなく次の3つです。

  1. 最終的に手元に残る自己負担はいくらか
  2. 入金までに立て替える額はいくらか
  3. そのお金で、何人分の仕事が減るのか

3つ目を見積もるには、その作業に今どれだけ時間がかかっているかを先に数えておく必要があります。そこまで並べて初めて、投資として見合うかが判断できます。

MONOSASHIの補助金一覧では、各制度の詳細ページに補助率と自己負担の試算を載せています。数字は変わりますので、申請前に必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。

3つ目の「何人分の仕事が減るのか」は、AI活用診断で先に出しておくと、上限額の大小に引っぱられずに済みます。

よくある質問

補助金は上限額が大きいものを選べばいいですか。

上限額は「これ以上は出ません」という線でしかありません。実際に戻る額は補助率で決まるので、上限だけを見て選ぶと自己負担の見積もりを外します。

自己負担はどう計算しますか。

対象経費から補助される額を引いた残りです。加えて、対象外の費用や消費税など、補助率の計算に乗ってこない負担もあります。

枠が複数ある制度は、どう選べばいいですか。

枠ごとに補助率も上限額も要件も変わります。どの枠で申請するかを決めてから、自己負担を計算してください。

結局、何を並べて比べればいいですか。

3つです。実際に戻る額はいくらか、入金までに立て替える額はいくらか、そのお金で何人分の仕事が減るのか。

この記事を書いた人
MONOSASHI 編集部
「測る」メディアの編集部。システム開発・AI・DXの実務知識を、現役エンジニアと元発注担当の視点で、判断に効く形に編集しています。
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